「好きなことをしよう」という圧力
「好きなことをして生きよう」
最近よく耳にする。
この「好きなことをして生きよう」というセリフは新時代の幕開けを感じさせる。
しかし、同時に多くの若者を困らせている。
実際に好きなことをして生きている人はどれくらいいるのか。
僕の周りを見ても、彼らが言う「好きなこと」を職業にしている人はいない。
そもそも皆、「好きなこと」がない。
みんな、読書や運動、勉強の習慣はなんてない。好きなことで副業をやろうなんて気もさらさらない。
プライベートはテレビ、パチンコ、酒飲み、映画、たまった録画番組をみる。まあそんなとこだ。
僕はこんな人たちをバカにしようとは思わない。底辺出身の友達だけでなく、今いる会社の高学歴な人たちも基本こんな感じだ。
好きなことをして生きている人にとって、そんな人たちは一見不幸に見えるのだろう。
確かに仕事に面白みはかけるかもしれないが、それなりの給料はもらえる。残業も少ない。友人、恋人もおり、家族がある人もいる。
そんな暮らしの中に「好きなことをしよう」がやってきた。こいつが、いわゆる普通の暮らしをしていた人を困惑させている。
好きなことをしていない人生=クソ、他人の人生、古い、充実していない。
そんなふうに聞こえるのだ。
今までは、社会人の価値観というのは割と画一的なものだったと思う。
会社に入って、家に変えればテレビをつけ、酒を飲んだり、パチンコをする。休日はゴルフや釣り。女や仲間と遊ぶ。(僕はどれもしない)
そして年齢が経てば、結婚して幸せな家庭を築く。
それが人生の幸せ。ある種思い込みではある。僕の地元の田舎ではそんな人生のモデルで生きている人は、めちゃくちゃたくさんいる。つーかほぼ全員だ。
それはそれでいい。幸せとは適当なもので、自分が幸せと思い込めば幸せなんだ。上を知るから自分が不幸になる。
インターネットが特に「好きなことをして生きよう」に拍車をかけている。
これまでにも、誰がどう見ても幸せそうな人たちというのはいた。
しかし彼らは自分たちとは別の世界の住人だと思えた。だから自分と比べることもなかった。
プロ野球選手がすごい金持ちってのを知って、あんまり嫉妬や不幸を感じる人はいないと思う。
「自分には届かない夢の世界の人たち」
そう割り切れていた。
ところがどっこい、今はそこらへんにいる一般人が成功している。
しかもこれまでの幸せのモデルとは違う生き方で。
そんな彼らをみて、
「俺は別に好きなことが仕事ではない。上司に毎日怒られるし、数字も全然あがらない。果たして俺は幸せなんだろうか?」
そうやって不幸になる人がいる。
僕はYoutuberやブロガーをあまり一般人だとは思わない。よく、誰だってできる時代という人がいるが、現実の大衆はもっとレベルが低いことを知った方がいい。
これは底辺出身でないとわからないかもしれない。
大衆に「好きなこと」なんてないのだ。そして行動する力も。
これは当たり前な話だと思う。勉強や部活ににしろ、ずっと、言われたことをやって生きてきたのだ。
目標も、目標達成までの道のりも誰かが考えてくれてきた。
そんな彼らに好奇心はない。勉強部活以外はテレビやスマホ、向こうからやってくる情報だけで構成されてきた人間。自分から情報を取りに行く力はない。
それを急に、大人になって「好きなことをしましょう!」としても無理な話だ。
残酷だがこれが現実。
そんな行動の仕方わからないのに「好きなことして生きよう」という世間の風は感じる。説かれれば説かれるだけ不幸を感じる。
休日だけをとっても、
「休日は何か生産的なことをしなくてはならない。何もしない休日は悪。なんとかして充実させなくてはいけない。」
世間の煽りはこのように感じさせる。
これでは休日もまるで仕事のようだ。
「好きなことをして生きようから」が「好きなことをしなくてはならない」に聞こえる。
これまでは何もしない休日に不満を感じることはなかったのに。
だから、今の社会の「好きなことをして生きよう」という風潮に疑問を感じる。
好きなことがあること自体、それは才能であり、恵まれているんだ。好きなことをがない状態から、意識的に好きなことを探して、好きなことをしている人はすごく少ないのではないだろうか。
好きなことがマッチしている人はほぼ偶然のくせに。
ほとんどの人は、幸せというのをどこかで妥協点を決めて生きている。
確かにサラリーマンとして働くのは、Youtuberやプロブロガーな人の人生と比べたら、好きなことではない。
だが、そこで満足するはずだった人はたくさんいるのだ。
「まあこんなとこでいいだろう」
というふうに。
それを
「好きなことをして生きよう」というフレーズは妥協するラインを上げてくる。
「あなたの人生それでいいの?」って。
いいんだよ馬鹿野郎。そもそも大衆は人生をそんな大げさに考えてはいない。毎月の給料と毎日のビールあればそれで満足なんだよ。
みんながみんな野心を持って、人生を素晴らしいものにしたいと考えてはいないことを知ってほしい。